かめさきこども・アレルギークリニック

亀崎 佐織
日本小児科学会認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
〒561-0872
大阪府豊中市寺内2丁目10番8号

電話:06-6865-5300

アレルギー辞典

食物アレルギー

1.食物アレルギーの起こるわけ

厚生労働省研究班による食物アレルギー診療の手引きによりますと、食物アレルギーとは「原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体にとって不利益な現象(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシーなど)が惹起される現象」とされています。かんたんに言えば、食べたものによって、アレルギー反応がおこる、ということです。

食物アレルギーは、乳幼児に多く、年齢とともに治ってくることがほとんどです。生まれたばかりの乳児は、まだ消化吸収機能が未熟で、たんぱく質を十分に分解できません。また、腸管の粘膜上で働く免疫物質も不十分で、からだを守ることができません。こういうときに早くからアレルギーをおこしやすいたんぱく質が入ると、アレルギー症状をおこすようになります。でも、成長とともに消化吸収能力が発達し、免疫物質が増えてくると、食べてもアレルギー症状がおきなくなってきます。

多くの食物アレルギーのお子さんたちにとって、食べられない時期はほんの1〜2年なのです。しかし、重症の食物アレルギーの方では小学校にあがるころになっても給食が食べられなかったり、ソバや小麦など、食品によっては成長してもよくならない強いアレルギー症状を起こす場合もあります。何を、いつから、どのくらい食べられるようになるかは、個人個人によってまったく違います。

2.食物アレルギーの実際

食物アレルギーの有病率は、大人で1〜2%、乳児では10%超えるといわれています。小中学生では最近の検査で4%を超えました。最近増えてきて、学校現場でも問題になってきています。

しかし、ひとくちにアレルギーといっても症状はさまざまで、軽いものから、命にかかわるアナフィラキシーショックをおこすものまで、さまざまです。

アレルギー症状にはいろいろあります。皮膚では、湿疹、かゆみ、じんましんがおきます。唇が腫れたり、口の中がぴりぴりしたり、のどが苦しくなったりもあります。また、腹痛、嘔吐、下痢など消化器症状や咳、喘息など呼吸器症状もあります。全身にアレルギー症状が及ぶことをアナフィラキシーといいます。呼吸困難や血圧低下がおこるのをアナフィラキシーショックといい、ときに命にかかわることもあります。アナフィラキシーをおこす食品は完全除去が必要です。しかし実は、ショックをおこすような重症の患者さんはまれです。

アレルギーを起こす原因物質をアレルゲンといいますが、6歳までは、卵、牛乳、小麦が3大アレルゲンです。6歳以降になるとこれらの食品はアレルギーが治って食べられるようになっていくことが多く、魚類、ナッツ、甲殻類、果物などが増えてきます。検査だけでは診断できず、われわれ専門医は、実際に食べたときの症状や食物負荷試験(医療機関で食品を食べて反応を診る検査)で食べられるもの、食べられるものをちゃんとわけて、最低限の除去食を指導します。乳児でも栄養不足にならないように離乳食をちゃんと進めることが必要です。

3.食物アレルギーの診断と食物負荷試験

食物アレルギーの診断は、皮膚検査、血液のアレルギー検査、それから実際に食べたときの反応などをあわせて、総合的に行います。検査もなしにあてずっぽうに食物アレルギーとして食事療法を行うと、子どもの成長に必要な栄養分が不足することがありますので要注意。

しかし、血液検査で陽性に出たからといってアレルギー症状があるとも限らないのです。アレルギーのスコアが低くてもアナフィラキシーをおこす人がいる一方で、スコアが高くても、普通に食べられる人もいるので、食物アレルギーの診断は難しい。経験のある専門医にご相談を。

食べてみてアレルギー症状が出るかどうかが一番の診断法なのですが、これにも問題があります。食物アレルギーの赤ちゃんはアトピー性皮膚炎があることが多いのですが、ちゃんと皮膚状態をよくしておかないと、食べたせいでかゆいかどうかが判断がつかないのです。

確実な診断法は食物負荷試験です。医療機関で、アレルゲン食品を食べて、実際にどのような症状が出るか、2-3時間様子を診るのです。これには目的が三つあって、(1)本当にその食品がアレルゲンか、確認する、(2)どのくらいその食品を食べられるのかその量(閾値)を調べる、(3)本当にアレルギーがよくなったか確認する、です。 小さいころアナフィラキシーをおこして除去食にしたまま何年もたつのに検査もせずにあるいは検査でよくなっているのに除去を続けている患者さんが時々来られますが、病院で食べてみると何も起きない、もう治っているのです。当科では、少量の食品を食べて大丈夫なのを確認して食べて慣れて治していく治療(経口免疫療法)を開始することが多いです。ただこの検査は、患者さんに、何をどれだけどういう食品で食べさせるかを決めるのには経験も必要ですし、安全に行わないといけません。万が一アナフィラキシーになった時にはそれなりの処置が必要ですから、専属のスタッフや、病院では入院ベッドを用意したりもしますので、時間と人手がかかり多くの患者さんに対応できません。しかし患者さんは増加し、専門医は限られるのでどこでも困っています。

4.食物除去療法の実際

食事は日々三度三度食べますので、お母さんにとっては、どの食品をどれだけ除去するかは大問題です。除去食の指導は個々に行うべきですが、大原則があります。

  • アレルギー症状をおこす食品で除去しなければならない食品をきちんと決める
  • 食品によっては加熱したり、回数や量を減らすことで食べられるものもある
  • アレルギーの強い食品では、母乳をあげているお母さんも除去が必要な場合もある
  • 離乳食は遅らせず、5ヶ月から開始する
  • 離乳食はおかゆ、野菜から始めて、小麦、乳製品、卵はなるべくあとにまわす
  • 加工品やベビーフードは最小限にしてなるべく素材を調理してつくる
  • 除去食の評価は6ヶ月ごとに行う
  • 同じものばかり続けてとらずにいろんな食材を使う

食物アレルギーの問題は、「食べる」という日常生活に不可欠な行為によってアレルギーが引き起こされる可能性があるということです。また、日々食事作りを担当するお母さんにとって、除去食をどのくらいの厳しさでどのくらいの期間行うかは大問題です。本来は楽しいはずの家族の食卓が、不安と憔悴の場になってはいけません。除去食は、必要なものをきっちり除去し、ほかのものはいろいろ食べる、というのがコツです。

食物アレルギーと診断された赤ちゃんのうち、3歳までに3人中2人が、12歳までに10人中9人がよくなります。食事の除去はだんだん必要がなくなってくるのです。ストレスをためないように、気長に長続きするような方法で食事づくりをくふうしましょう。

卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そばの7品目は、加工品に含まれる場合表示が義務づけられています。しかし最近はさまざまな加工食品があふれていて、表示を見てもどこに入っているのか、同じ製造ラインに使っているのはいいのか、などお母さんたちは混乱します。患者さんの重症度によって異なるので、主治医に相談してください。最近は大手食品会社が、アレルギー用の食品、調味料など味に工夫して開発しています。手作りが一番ですが、上手にこういうものを利用するのもいいでしょう。

5.アナフィラキシーの対応

気をつけていても思いがけなくアレルゲン食品が体内に入ることがあります。急速に皮膚の赤みやかゆみ、腫れがおこったり、嘔吐したり、咳や喘息発作がおこる場合はアレルギー反応です。二つ以上の反応がおきれば、アナフィラキシーといいます。もし、抗アレルギー剤が手元にあれば、すぐ飲みましょう。局所的な皮膚症状だけでおさまってくればいいのですが、症状がおさまらず進行する場合、呼吸器症状がある場合はは救急車で病院へ。多くは、ある時間がすぎるとアナフィラキシーはおさまってくるのですが、ときにひどくなってしまうこともあります。

重症の食物アレルギーでアナフィラキシーを何度もおこす患者さんのためには、エピペンといって、アナフィラキシーの治療薬の自己注射が健康保険で処方できます。3歳以上あるいは体重15kg以上で、アナフィラキシーを起こすような食物の除去が必要な患者さんには持ってもらっています。旅行先で使い、助かったという患者さんもいます。

公立の保育園ではエピペンを預かってくれるところが増えてきました。吹田市などは市の主催で毎年保育園の職員向けに食物アレルギーとエピペンの使い方の研修会をしていてとても熱心です。学校現場は地域、学校それぞれで対応が異なります。10年前は学校に注射をもってくるなんて、とか医療行為は学校の業務ではない、などと拒否反応が多かったのですが、文科省が通達を出してから、あるいは重症の食物アレルギー児が入学するのをきっかけに前向きに取り組んでくれる学校が増えてきました。子どもたちが安全に学校生活を送れるように、現場はお忙しいとは思いますが、よろしくお願いしたいところです。

6.食べたほうがよくなる(経口免疫療法)

以前は、IgERAST価の高い食物アレルゲンは、数値が下がるまで除去して待とう、というのが主流でした。しかし、いつまでたってもIgEが下がらないアレルギー体質の強い子もふえてきて、その中に、普通に食べられる子も多いことがわかってきました。しかも、少しずつ食べ始めていくと、IgERAST値 がだんだん下がってくるのです。

ということで、ある時期になったら、食べれるかどうか試して、増やしていこう、というのが、最近のアレルギー専門医の考えです。ただ、ある時期、というのが、患者さん個人個人で違うし、食品によっても違うので難しく、経験がいります。 たとえば、卵白のRAST値が2〜3くらいであれば、1歳すぎから卵加工品(パンやビスケット、あげものなど)が食べられる患者さんが多いです。ちょっとくらいぶつぶつが出ても、続けていればよくなることがほとんどです。患者さん個々の状態にあわせて、詳しい食べ物の指示をして、だんだん増やしていきます。実はこれは、経口免疫療法(減感作療法)といって、少しずつ慣らしていって感作を減らす(アレルギーをよくする)という治療法です。ほとんどの患者さんは、家庭でこうしてだんだん食べられるようになります。

ただ、重症の食物アレルギーの患者さんはIgEのRAST値がなかなか下がってこないし、年齢が進んでもちょっとの量でアレルギー反応をおこします。こういう患者さんには食物負荷試験をして、少しずつでも食べられないか、ほんとにうどん0.5gから0.1gずつ増やす、なんていうゆっくりした免疫療法になります。なんどか増やしていくうちに家庭でアナフィラキシーを起こすこともありますが、軽症であれば手持ちの抗アレルギー剤を飲んでおさまります。重症でも治っていく患者さんは、家族特にお母さんが何度つまづいても根気よく継続する熱心さがあります。何年もかかって小麦、卵、乳とだんだん食べられるようになる患者さんを診ていると、継続は力なり、と思います。

7.口腔アレルギー症候群

これは比較的最近注目されてきたアレルギーです。

口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome: OAS)といって、特徴は、

  1. 原因食物の口腔粘膜への接触性じんましんなので、症状は、口腔・咽頭(口の中とのど)に限られる。
  2. 原因食物は、果実・野菜が多い。
  3. 花粉症やラテックス(天然ゴム)アレルギーに高頻度に合併する。

というものがあります。

バラ科の果物であるリンゴ、モモ、サクランボ、ナシなどを食べると、唇が腫れる、のどがいがいがする、のどがかゆい、気持ち悪い、のどがしめられる感じがして苦しい、というような訴えでわかります。ふつうは口の中やのどの粘膜だけで終わるのですが、まれに皮膚のじんましんやくしゃみ、鼻水、呼吸困難などを起こすこともあります。

調べてみると、こういう果物のIgE 抗体や皮膚のプリックテストが陽性で、それと同時に共通アレルゲンであるシラカバ花粉のアレルギーであることもわかります。

そのほか、天然ゴムであるラテックスアレルギーはバナナと共通抗原性を持っています。
バナナを食べると吐く、とか唇が腫れる、というお子さんがたまにいますが、ゴム風船を膨らましたら口がぱんぱんに腫れちゃった、ということになります。日頃はこういう果物を食べず、ゴム製品に触れなければよいのですが、問題は、手術や医療処置、点滴などに使われるゴム手袋、カテーテル(ゴムの管)、点滴のつなぎのゴム連結部などを使用することによって同じアレルギー症状が出る可能性があることです。ですからこういう患者さんが手術や医療行為を受けるときは、ちゃんと申告して、ラテックスフリーの手袋や医療材料を使ってもらう必要があります。

花粉症の患者さんが増えるにつれ、この病気も増えている感じがします。専門医にいきついて診断がつくまではくりかえし症状を経験し、不安になる患者さんが多いようです。

8.食物依存性運動誘発アナフィラキシー

(Food Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis:FDEIA)
これも最近増えてきた特殊なアレルギーです。

特定の食品(小麦や甲殻類が多いのですが)を摂取して2時間以内に運動をするとおこるアナフラキシーで、学童生徒の12000人に1人の割で存在するといわれています。運動前に原因食品を摂取しない、摂取後2時間は運動しない、ということで予防できるのですが、起こればアナフィラキシーの処置が必要です。運動系の部活をする子どもたちには深刻な問題で、学校現場の理解も必要です。また、原因が特定できない年長児の運動がらみのアナフィラキシーも増えていて、専門医でも難しい場合もあります。

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