花粉症はいやだね

3月は長い間寒かったのが、後半になってようやく暖かくなってきました。でもそうなると、スギ花粉の飛散が増えて、花粉症の症状が増えてきます。

この時期、外来をしていると小さな子でもお母さんが、花粉症みたいで・・とよくおっしゃるのですが、要は鼻水が続くということなんですね。でも普通は、3歳以下の小児に花粉症はあり得ません。アレルギーの体質のある人は、何かアレルゲンが体に侵入すると(触ったり、吸ったり、食べたりとか)、IgE抗体という、そのアレルゲンに反応するタンパク質を作ります。それがたくさん体の中にあると、入ってきたアレルゲンに反応して、アレルギーの症状(かゆみ、じんましん、鼻水など)が起きるのです。スギ花粉は年に1回、2~4月に飛散しますから、それを取り込んでIgE抗体ができる。でも5月以降になるともう花粉はないので、体にあったIgE抗体はだんだん減っていきます。そして次のシーズンにまた花粉にさらされてIgE値が増えます。これを数年繰り返して、2月の時期にある程度の量の抗体を持っていないと症状は出ないのです。

IgE抗体をどのくらい作るかは、個人のアレルギー体質の強さによるし、どういう生活をしてどのアレルゲンがどのくらい侵入するかなど、いろんな要因があります。アレルギー体質の強い場合は5-6歳の小児でもスギ花粉症を発症することはあります。

でも、2-3歳のおちびさんの鼻水が続くのは、うまくかめずにすすったり、寒暖差の刺激で鼻水が止まりにくかったり、保育園で鼻かぜをもらったりとかがほとんどです。2歳になったら鼻かみの練習をして、ふがふがいいながらも機嫌よく食べて眠れていればあまり心配はいりません。

早く初夏になってほしいな!

スクリーニング検査って?

アレルギーの検査は、それぞれの物質に対してIgE抗体を持っているかを調べ、それによってアレルギー反応が起こるかで診断します。IgE抗体をもっていることを感作されている、といいますが、実は感作されていても症状がなければ、アレルギーの病気ではないのです。卵白のIgE がクラス3あっても、卵がたべられていれば卵アレルギーではないのです。

最近、アレルギーのスクリーニング検査が普及してきました。スクリーニング検査というのは、初めから食物アレルゲン、HD ダニ、イヌ、ネコなどの環境アレルゲン、花粉アレルゲン、カビアレルゲンなど、何種類もが組み合わされて決まっており、39種類とか、33種類とかのIgE抗体がいっぺんにだーーっと測定できるのです。最近では指先の血液少量で、30分で結果が出るドロップスクリーンというのもあります。

スクリーニング検査というのは、何がアレルゲンがあるかよくわからないので、アレルギー非専門の医師が行うのです。例えば、鼻がぐずぐず続いてアレルギー性鼻炎を疑う大人に行うと、スギやヒノキ以外の夏の花粉や、ハウスダスト、ダニが高値で、ネコにも感作されていたとします。アレルギーの検査は、感作されているものに気をつけてね、とそのまま渡すのではなく、それがほんとうに症状を起こしているのか、薬の処方だけでなく、そのアレルギー対策を指導しなければ意味がありません。春の花粉の時期の花粉対策は一般的に知られるようになっていますが、家の中の環境を見直してダニ対策、飼っている猫対策をしなければ鼻炎症状はよくなりません。

アレルギーの感作は、乳幼児期には食物アレルゲンが多く、2歳以上になると環境アレルゲン、4~5歳以上になると花粉アレルゲンが増えてきます。ですから乳幼児にスクリーニング検査をしても、花粉やカビなどは不要ですし、大人のスクリーニング検査に入っている食物アレルゲンは多くは不要で、もし感作があると、今まで食べていたのに食物アレルギーになった??などと考えたりします。

小児のアレルギー専門医は、乳幼児の食べ物で、何をどう、どのくらい食べてどうなったかを詳しく聞いてそれに応じたアレルゲンを選んで、CAP RASTというアレルギー検査をします。13項目まで保険でできますが、感作されているだけなのか本当に食べて症状が出るのかは、コンポーネントと言ってその食品のアレルギーを起こす蛋白成分のIgEを調べます。卵白のオボムコイド、乳のカゼイン、小麦のω-5グリアジン、ピーナッツのAra h 2,クルミのJug r 1などです。ピーナッツに陽性でもAra h 2陰性ならピーナッツアレルギーではありません。検査はして終わりではなく、その意味を説明し医学的対応を指導しなければ、意味がないのです。

当科で8年間食物アレルギーの負荷試験・経口免疫療法をしてきて卵と乳が食べられるようになり今小麦で頑張っている子のお母さんが、他院ですすめられてしたスクリーニング結果をもって相談にきました。ずっと普通に食べている米と大豆に感作があったのです。もちろん食物アレルギーではありません。説明して安心してもらいましたが、そんな混乱もおこすスクリーニング検査です。

アレルギーの病気は気長に治療しましょう

私どもは、小児科のなかでも、アレルギーの専門治療をしています。

アレルギーの病気は、基本にアレルギー体質があって、皮膚や気道が過敏なことから、アトピー性皮膚炎や気管支喘息という病気になるのです。かぜをひいて、熱がでて咳と鼻水があって、1週間で治っちゃった、というような子どもに多い感染症や、虫刺されで痛くて腫れたけど1週間で治っちゃった、という皮膚疾患とは異なります。

アトピー性皮膚炎は皮膚が過敏で炎症があり、湿疹やかゆみが続く病気です。薬を塗ればいったんは治りますが、放っておけばまた症状が出てきます。薬を塗ってよくなっても、皮膚への悪化因子を除かなければまた再燃します。悪化因子とは、乾燥、暑さ、汗、入浴時の体温上昇、皮膚にさわる髪の毛や服の刺激、ペットの毛や家のホコリなど様々あり、またひとによって異なるので、細かい問診や指導が必要です。薬も、ステロイド外用薬がよく効きますが、塗り続けるとよくないので、出たら塗って、よくなったらやめて、また出て、ということが繰り返されていました。でも最近ではステロイドでない、塗り続けていい新しい薬が出て、ステロイドでいったんよくしてからその、モイゼルトやコレクチム、プロトピックを塗り続けることでいい状態を維持し、そのうち皮膚の炎症がよくなる、ということができるようになりました。この数年、重症だったアトピー性皮膚炎の子どもたちが本当によくなってきています。かゆみのないつるつるの皮膚で楽しく過ごしてほしいです。

気管支喘息も、発作のあるときだけ治療をして、よくなって放っておけばまた発作が起きます。それを繰り返すうちに気道の炎症は進んでいき、何年もたつと気道がかちかちになって元に戻らないリモデリングという状態になり、そうなるともう呼吸機能はよくなりません。発作の時の治療でなく、もともとの気道の炎症を抑える長期管理薬が必要です。飲み薬ではモンテルカスト、プランルカスト、それでだめならステロイドの吸入薬が追加になります。最低3か月は続けなければなりませんし、数年にわたることもあります。でも、あまり病気をしなくなり、成長して気道がしっかりする6歳前後になると発作も減り、長期管理薬も減らしていけるし、6歳で呼吸機能検査がよければ、小学校に入る前後で薬を中止できる子もいます。1~2か月ごとに定期通院してもらうので、大変ですが、薬を続けていれば咳もなく、発作も起きないということは、保護者の方が実感されていると思います。喘息も、発作を起こす悪化因子を知って、避けることが大切です。ハウスダストやダニ、ペットの毛、冷たい空気や激しい運動、かぜなどです。環境因子は掃除や工夫で除けますが、冬になると寒い空気はあるし、体育でマラソンはあるし、かぜは流行るし、こういうものは除けません。ですから長期管理が必要なのです。寒い中でマラソンをして、風邪をひいても発作がなければすいぶんよくなっています。呼吸機能の検査をして、患者さんと家族を励まして、喘息をよくしていこうと努めています。

定期受診の予約はいつもほぼ満杯です。みんな、来てくれてありがとう。どんどんよくしてかゆみや発作ゼロをめざそうね!

 

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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