今月の独り言
アレルギーとは
アレルギー体質は、いろんなものに過敏で、体内に侵入してくるいろんな物質を外界からの敵だとみなしてしまうのです。本来人間の体には、免疫と言って、自分のものは受け入れるけれど、他から入ってきたものは「非自己」(自分でないもの)として、排除しようとするシステムがあります。これがあるから人間は、細菌やウイルスなど、多くの病原体が侵入してもいろんな免疫システムが働いてやっつけることができるのです。
でもアレルギー体質は、病気を起こす病原体ではなく、なんでもない身の回りにあるものを敵とみなしてそれに対する特殊な抗体IgEを作ってしまうのが問題なのですね。乳幼児期には卵や牛乳など食品が、幼児期以降は、ハウスダスト、ダニ、ペットや花粉など。何かに対するIgE抗体を持っていると、その何かが体内に侵入したときに、その何かをやっつけようとしてアレルギー反応がおこるのです。花粉が空気中に増えると鼻水、くしゃみ、目のかゆみがくるのも、ほこりっぽい環境やペットのいる家にいくと咳が出てぜいぜいと喘息症状が出るのも、卵アレルギーの赤ちゃんが間違って卵の入ったものを食べて吐いてじんましんが出て咳がとまらなくなるのも、皆それぞれのアレルギー反応です。
でも、誰が、どういうアレルギー体質を持っていて、何にどれだけの反応が出て、その対策として何をどうするのかというのは、ほんとにその患者さんの年齢、体質、検査でわかったアレルギーの程度、実際の症状など、個々に違っていて、個々に診断と指導が必要になります。血圧いくつ以上で高血圧だから降圧剤飲みましょうとか、コレステロールいくつ以上で高脂血症だから薬のみましょう、というのではないのです。 IgEがものすごく高くても食物アレルギーのない子どももいるのに、検査の値が高いだけで今まで食べていたものを制限されたり、逆にすごいダニやハウスダストアレルギーで慢性の鼻炎がひどくそのせいで咳が出ているのに、喘息の薬をいっぱい出されて、家庭のダニ対策がまったくされていなかったりします。
われわれアレルギー専門の小児科医は、こどもをとりまく環境を全部把握し、全身の病気を診ます。初めての患者さんで、今までのお話を聞いて、検査結果を評価し、診察して診断し、どう治療してどんな指導が必要かを判断するのはすごく専門的な技術だし、多くの経験がいるのです。
ある程度の年齢の重症児は、アトピー性皮膚炎も喘息も鼻炎も食物アレルギーもあり、ご家族は混乱しています。すべてを整理して、ひとつひとつ解決策を提示するのに時間がかかります。予約でもお待たせしてしまうのは、そういう患者さんが増えているせいでもあります。説明や指導を減らせばいいのでしょうが、どうも性格上それができません。やれることは全部やりたい、というスタンスでやってきました。そろそろ限界かもしれませんが・・・
どうぞご理解ください。今日も外来終了時間は1時間オーバーでしたが、患者さんのみなさんが、多少待たされても満足していただければ幸いです。