なぜ春に患者さんが多いのか

暖かくなり、桜もいつもより早く咲き始めているそうです(見てない)。
しかしこのよき季節のなか、亀崎はひたすら働いています(涙)。患者さん方には、お待たせしたり予約が取れなかったり十分に聞きたいことが聞けなかったり、不自由をおかけしてすみません(礼!)。いつも年度末は、保育園・幼稚園・小学校の入園・入学に際して、食物アレルギーの検査や診断書が多いので外来受診の患者さんが増えるのですが、今年は2月から混み始めて、あれあれと思っていたら、3月はひどいことになりました。
特に午前中の一般小児科外来は45人制限ですが、普通の風邪ひきの診療と違ってアレルギーの説明をしているとひとりひとりに時間がかかり、午後の予約の外来開始までに終わらず、ずっとずれこむ、ということになります。どうして今年はこんなことになっているのか、分析してみました。
1)アレルギーの患者さんが増えているから。とくに食物アレルギーの患者さんは小学生以降だけでも、この10年で2.6%から4.5%に増えています。専門医療では、どうして食物アレルギーが起こるか、検査値のIgEはどういう意味か、どの食品をどれだけ除去すべきか、あるいはどの食品をどうやって食べていくか、という話を患者さんごとにしているとものすごーく時間がかかります。とくに、経口免疫療法といってすこしずつ食べていく方法は、いっぺんに増やしてアナフィラキシーが出ては大変ですから、増やし方を詳しく話します。
2)アトピー性皮膚炎の乳児にプロアクティブ療法をしているから。乳児のアトピー性皮膚炎は、最近では早期に治して食物アレルギーの進展を予防しようというのが専門医の流れです。赤ちゃんだからステロイドのぬり薬を使わないというのは今や時代遅れで、さささっと治してしまいましょう。TARCというアトピー性皮膚炎の重症度を示す検査値を参考にしてステロイド外用の塗り方を細かく指導します。よくなってもいきなりやめずに少しずつ減らしていくのです。そうすると、1週間後、2週間後にまた来てもらってそのあとの塗り方をまた変えるので、何回も同じ患者さんに受診してもらうことになり予約がいっぱいになります。昔は、3日塗って3日休んで、はい、2か月後、といっていたのが、プロアクティブ療法だとそうはいかなくて。でもTARCが10000を超えていた赤ちゃんが、たいてい3か月で正常になり治っていきます。
3)小学校も食物アレルギーの診断書、学校生活管理指導表の提出を求めるようになったから。以前は、小学校は、担任の先生まかせで給食から卵や乳を除去したりして、医師の診断書がなくてもいい、というところが多かったのですが、平成24年12月、東京調布市で給食の誤食で児童が死亡してから、文科省が学校のアレルギー対策に乗り出し、学校生活管理指導表を活用するようにという通達を出しています。医療機関に受診しないといけないし、診断書にお金はかかるし、でもちゃんとした根拠と具体的な除去食品を書類で提出するのは当然だと思います。それで、1年ぶりとか3年ぶりとかいう患者さんがどっと押し寄せ、検査をして説明をして、食事指導して書類を書いて、ということになります。
4)春先で、喘息発作や花粉症が多いから。季節の変わり目はアレルギーの出やすい時期です。花粉症とわかっていれば耳鼻科に受診されるでしょうが、まだ小さい子で、咳が続く原因が花粉症とわかることもあるし、RSウイルスやマイコプラズマ感染で喘息発作が続き、入院が必要なお子さんもちらほらいます。治療の説明や、なぜ発作が起きているかの分析もお話すると時間がかかります。

というわけで、先週の月、水、金、土は、朝9時前から始めた外来がぶっ続けで6時すぎまで、9時間労働で、そのあと紹介状書きなどの書類仕事もあり、連日帰宅が9時でした。さすがにくたびれていますが、そのなかでも、長いあいだアレルギーとつきあいながら高校に進学した子どもたちがいてお母さんとともに成長を喜んだり、少しずつ卵や乳製品が食べられるようになってうれしい子どもたちがいたり、あんなにひどかった喘息が何年がかりでも薬が減らせてとうとう薬なしになったり、こどものアレルギー専門医ならではの喜びとやりがいも感じさせていただいています。
もう少し、混雑する外来になると思いますが、申し訳ありません(もう一回、礼!)。よろしくご理解いただき、一緒にお子さんのアレルギーに向き合っていきましょう。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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