患者さんの訴えは正しい

日本アレルギー学会は、年に一度(去年までは年に2回でしたが)いろんなアレルギーの研究や最新知見や症例が報告されるアレルギーの専門学会の集会をしています。今年は5月26日から28日、火、水、木の日程で行われました。平日に三日も休むのは、開業医では患者さんのご迷惑になるので、今年は水、木の二日間休診にして学会に行ってきました。アレルギーと一口に言っても、いろんな分野、いろんな病気、いろんな研究があるので、日々勉強しないと専門医といえども、追いつけないのです。
今回猛烈に反省し、感じたのは、患者さんの訴えは正しく、ちゃんと耳を傾け、調べないといけないということです。
つい最近ですが、風邪で葛根湯という漢方の薬を飲んでいると、アレルギー症状が起きにくいんですよ、とおっしゃった患者さんがいらっしゃいました。私は漢方薬の勉強をしていないし科学的証拠を知らないので、いやあそんなことはないでしょう、と言ったのですが、今回学会に行くと、ポスター発表で、葛根湯のプエラリンという成分が、大腸粘膜で制御性T細胞というリンパ球を増やして食物アレルギーを抑える、という富山大学の実験データがあって、あれ、実証されてる!と思いました。
また、鶏卵のアレルギーが昔あったけど今食べてる、という小学生のお母さんが、給食のウズラ卵1個で口がかゆいというんです、というので、いや、鶏卵が食べられるのにそれは気のせいでしょう、と言いました。鳥類の卵はアレルギーの起こしかたはみな同じ、と習っていたからです。しかし今回やはりポスター発表で、鶏卵にはなくウズラ卵にある成分が、嘔吐・下痢を起こした患者さんから証明されたというのを見つけました。
それから、年長児に、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーという病気があります。食事をしたあとに運動すると、じんましんや呼吸困難が起きるのです。小麦や甲殻類の摂取でおこることが多く、検査で証明されればいいのですが、最近、今までまったく食物アレルギーなどなかった中学生で突然原因不明のこの病気が起こる症例が増えています。検査で出ればいいのですが、調べても何も出ません。これも、ポスター発表で、何回か起こすと食事の中のある食品があやしいということになり、入院して怪しい食品を食べて運動する、という大変な検査をしています。そうすると、カレー粉の中のセリ科のスパイスとか、今まで食べていた肉類だとか、思わぬものが原因であったことが証明されていました。
最近いろんな変わったアレルギーの病気が増えているのです。珍しいので、すごく興味をもった医師がいろいろ試行錯誤して何かを証明して報告するのが学会です。私も、昔済生会中津病院にいたころのように、専門病院で入院設備もあり、時間的拘束がなければ、いろいろ調べたり問い合わせたり特殊な検査をしたりして、そういう稀な難しい病態に迫ることができましたが、開業して、週に六日間ずっと外来の仕事をしていると、調べたりいろんな知識を取り入れる余裕もありません。学会は、そういう自分にカツを入れる場であり、いろんな新しい研究内容を聞いて、とてもエキサイティングでした。
休診はご迷惑をおかけしますが、日々の診療でこれを患者さんに還元していきたいと思います。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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