今月の独り言
あのテープはぜんそくの薬です
暑い長い夏でしたが、9月半ばになってなんかいっぱい台風が来て、風やら雨やらつぎつぎ多くなって、ふと気づくと9月も末、涼しくなっております。すこし喘息発作は増えていますが、あまり病気は流行っていません。子どもたちは、幼稚園児も小学生も運動会の練習たけなわです。天気になるといいけどね。
10月に日本小児アレルギー学会が群馬で開催されます。そのシンポジウム「乳児喘息」でシンポジストを依頼され、勉強しなおしたりスライドを作ったりしているのですが、私の担当は、喘息の発作の時に使う「気管支拡張薬」です。発作の時に吸入したり飲んだりすると楽になるのでいい薬なのですが、実は気になることがあります。
患者さん(小さな子)が受診されて診察すると、背中にぺたっとテープが貼ってあることが時々あります。あれは実は気管支拡張剤の徐放(ゆっくり効く)薬で、ぜんそくの薬なのです。でも診察すると、喘息の音は聞こえません。「ぜんそくなんですか?」と聞くと、お母さんは「え?いや前にもらったテープが残っていたので貼ったんですけど」。お母さんは、風邪の薬、咳止めと思っていて、自分の子は喘息だとまったく思っていない。それなのに喘息の薬がなぜ使われているのでしょう。
実は気道の閉塞症状を伴う気管支炎ではこのテープ、処方していいことになっていますが、そもそも気管支炎なのか、気道の閉塞があるのか、はたまた本物のぜんそくなのか。多くの非専門医の先生は、そこをあいまいにしてテープを出すし、喘息かどうかをはっきり言わないので、お母さんたちはテープを喘息の薬と思っていません。でも、風邪の咳、鼻水が絡んだ咳にはこれは全く効きません。気管支喘息の発作の時は気道が閉塞しているので、気管支拡張剤のこの薬が効くのです。調べてみると、このテープは本当のぜんそくの患者さんに出されているのは10~20%くらいで、ほんとに、風邪の子どもたちに山ほど出されているのです。数日なら効かないだけで、問題ないかもしれませんが、長期に単独に使って悪影響がないかどうかは、調べられていないので不明です。
まあそういうことを学会のシンポジウムでお話しして、気管支拡張薬はちゃんと診断して使おうよ、と言いたいです。もし聴診もされず、テープをもらったら、貼らないほうがいいかもね。1週間以上貼り続けてよくならなければ、もう一回診てもらってください。