今月の独り言
意見書のシーズンになりました
2月末から3月にかけて、食物アレルギーの患者さんが、次年度の給食を除去食にしてもらうための医者の診断書が必要になって数多く来院されます。保育園や幼稚園の意見書、学校の生活管理指導表です。
食物アレルギーは乳幼児に多く、年齢とともに治っていきます。半年ごとにアレルギー検査で抗体値をチェックし、少しずつ食べていくやりかた(経口免疫療法)をお話して実行してもらうと、だんだん食べられるようになります。ですから保育園の意見書は、数回書いているうちにどんどん食べられるものが増えて、最後に除去食解除と書くことができて、よかったね、ということになります。しかし、重症の患者さんや多品目のアレルギーがある患者さんは時間がかかります。食物負荷試験をしても症状があると、経口免疫療法にもっていけません。また、重症であるほど、少しずつ食品を増やしていくのですが、ときどき途中で症状が出ることがあり、また減らしてから少しずつ、となると食べられるようになるまで時間がかかります。こういう場合は、小学校入学のときも何らかの除去が必要で、学校生活管理指導表の食物アレルギーの欄に詳しい記載が必要になるのです。昔は就学時の食物アレルギーは少なかったのですが、近年増加しており、平成25年度の文科省の調査では児童生徒の4.5%が食物アレルギーでした。
この時期になると、1年ぶり、2年ぶりで受診される小学生・中学生がいます。去年の検査で、これをこんなふうに少しずつ食べてね、とご家族と本人に指導しているのですが、「食べるもの、増えてますか?」と聞くと、「食べてません」との返事が多く、がっかりします。食べさせるのが怖い、本人が食べたがらない、親が忙しくて食べさせる余裕がない、本人が高学年になって習い事があって、などなど理由は色々ですが、食物アレルギーを治すには、少しずつ気長に食べるものを増やしていくしかないのです。今頑張ってやらないと、大人になって食べられないものがいろいろあると大変なのは本人なのになあと思います。
もちろん重症児の経口免疫療法には危険も伴います。でも、何年もかかって食べられるようになった患者さんたちを振り返ると、やはりお母さんが熱心で、2か月ごとに受診され、進行具合を相談し、ときに症状が出てもそれでめげずに食べ続けた、という方たちです。
昨日も、9歳になったRくん、とうとう小麦・卵・乳と3品目の食物アレルギーを克服し、給食が全部食べられるようになりました。9年のお付き合いになるお母さんが、遠方に住んでいるのでアナフィラキシーになったとき近くの病院に理解がなく不安になったこと、通院が大変だったけど、来るたびに私が大丈夫だよ、食べていけるよ、と励ましたのが力になったことなど、涙ぐんでお話してくれました。改めてご家族の不安やつらさに思い至ったことでした。