アトピー性皮膚炎の新しい治療

アレルギーの治療は、この10年でずいぶん進歩しました。研究が進んで、病気の仕組みがわかってきたのと、それをもとにして新しい薬や、病気への向かい合い方の指導の変化も出てきました。

アトピー性皮膚炎は、20年くらい前までは、子どものアトピーにステロイドを使わないと公言する医者も多く、赤ちゃんの重症アトピーにワセリンだけで頑張らさせ、全身かゆくて掻いて傷だらけ、真っ赤になっていた子も少なくなかったです。そして、そういう赤ちゃんは、後からわかったことですが、経皮感作といって、バリア機能の落ちた皮膚から食物アレルゲンが入って複数の食物アレルギーになっていました。検査で食物アレルゲン陽性になると、卵アレルギーだから皮膚が悪化するのだ、と本人の厳しい食物除去と、母乳であれば母の食物制限もされていました。

2006年に二重抗原暴露説という新しい概念が提唱され、証明されました。これは今までのやりかたとまったく逆で、皮膚の湿疹が続くことで皮膚のバリア機能が落ちて食物アレルゲン陽性になるので早くから皮膚は治療してきれいにしたほうがいい、また食物アレルゲン陽性でも、食べられるものは早くから食べさせたほうが食物アレルギーにならないということです。

それで乳幼児にも積極的にステロイド外用薬を使って皮膚をよくしようということが学会からいわれてきました。乳幼児でもステロイドを使ってよくないわけでなく、多くの小児科医が使用経験がなく、どのくらい使って安全かを知らなかったのです。湿疹の程度によって効果のあるステロイドの強さを選択せねばならず、ひどいところに弱い薬を出しても効きません。また、チューブを1本出して、ひどい所に塗ってね、よくなったらやめてねというと、たいていの患者さんは、皮膚のぶつぶつにちょんちょんとぬるので効きません。皮膚の炎症は皮下で広がっているので、広範囲にしっかりぬらないと効果がないのです。当科では看護師がしっかり塗り方指導をして、効果を判定するため再診してもらいます。

ステロイドは塗ってよくなってもやめるとまた出てくることが多いのでそうなると、原因を調べたり、スキンケアをしっかり指導したり、プロアクティブ療法というステロイドをすぐ止めずに少しずつ減らす治療法にするなどとなります。最近はステロイドでない新しい外用薬が出て、コレクチム(デルゴシチニブ:JAK阻害剤)、モイゼルト(ジファミラスト:PDE4阻害剤)などで、いい皮膚をキープすることができ、ずいぶん楽になりました。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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