今月の独り言
マイコプラズマ流行中
気管支炎や肺炎を起こすマイコプラズマが流行中です。
小さな子には少なく、6歳以上が多いとされていましたが、今年は幼稚園児でも見られます。熱と、続くしつこい咳です。乾性咳嗽といって、あまり痰はからまず乾いた咳が長引きます。マイコプラズマは細胞壁をもたない細菌です。なので、一般的な細菌用の抗生剤、ペニシリン系やセフェム系は細胞壁合成阻害で抗菌作用があるので、これらは効きません。蛋白合成阻害薬であるマクロライド系やテトラサイクリン系が効果的です。細菌感染は、その病態が、何の感染かを見極めてそれにあった抗生剤を投与せねば意味がないのです。そもそも小児の感染症の90%くらいはウイルス感染で、抗生剤は効きません。
ウイルスは自分で生きていくことはできず、細胞内に入り込んで寄生して増殖します。なので、ウイルスの増殖を抑えるか、ウイルスの細胞への侵入を防ぐことによって抗ウイルス剤が作られますが、特定のウイルスにしか薬がありません。重症化するリスクがあるヘルペスウイルスや、大多数の感染がひろがるおそれのあるインフルエンザウイルスなどです。しかしこどもの発熱をおこす多くのかぜのウイルスには薬がありません。言い換えれば自分の免疫力・体力でしのぎながらよくなるのを待つしかないのです。
ちょっと熱が出たり続いたりすると、それがなんの感染か考えも調べもせずに安易に抗生剤を出す医者も多く、それでもよくならないと当科を受診する患者さんが最近多いです。40度熱がありのどが赤いねとセフェム系の抗生剤を3日分出され翌日には熱が下がった1歳児。のどをみると赤みのなくなった扁桃炎の所見。溶連菌だった可能性があります。溶連菌が検出されればペニシリン系10日間内服、が原則です。検査で陰性になっていたので薬は追加しませんでしたが。
マイコプラズマが流行中なので、ちょっと熱があって咳があるとすぐにマイコ用の抗生剤が短期処方される。それでもよくならない。マイコプラズマは耐性菌も増えているので、抗生剤の投与の順番があります。有効なら1週間は内服が必要です。ほんとにマイコだったのか、マイコだけど薬が効かなかったのかはあとからは判断が難しいのです。マイコの検査とかレントゲンとかちゃんとやってほしいなあ。たいていは気管支炎で終わり、薬が効けば熱は二日で下がり、咳は続きますが、家庭内安静で1週間くらいでよくなります。しかし先週は、レントゲンで肺炎もあり、最後のミノマイシンでもよくならず入院をした小学生もいました。熱が13日続いていました。
ちゃんと診察して、何が熱の原因か推測して検査を行い、必要なら投薬して、必ず、2~3日でよくなるか確認する、あるいはちゃんと親に病態を説明することを日々やっています。まるで探偵捜査のようですよ。