今月の独り言
スクリーニング検査って?
アレルギーの検査は、それぞれの物質に対してIgE抗体を持っているかを調べ、それによってアレルギー反応が起こるかで診断します。IgE抗体をもっていることを感作されている、といいますが、実は感作されていても症状がなければ、アレルギーの病気ではないのです。卵白のIgE がクラス3あっても、卵がたべられていれば卵アレルギーではないのです。
最近、アレルギーのスクリーニング検査が普及してきました。スクリーニング検査というのは、初めから食物アレルゲン、HD ダニ、イヌ、ネコなどの環境アレルゲン、花粉アレルゲン、カビアレルゲンなど、何種類もが組み合わされて決まっており、39種類とか、33種類とかのIgE抗体がいっぺんにだーーっと測定できるのです。最近では指先の血液少量で、30分で結果が出るドロップスクリーンというのもあります。
スクリーニング検査というのは、何がアレルゲンがあるかよくわからないので、アレルギー非専門の医師が行うのです。例えば、鼻がぐずぐず続いてアレルギー性鼻炎を疑う大人に行うと、スギやヒノキ以外の夏の花粉や、ハウスダスト、ダニが高値で、ネコにも感作されていたとします。アレルギーの検査は、感作されているものに気をつけてね、とそのまま渡すのではなく、それがほんとうに症状を起こしているのか、薬の処方だけでなく、そのアレルギー対策を指導しなければ意味がありません。春の花粉の時期の花粉対策は一般的に知られるようになっていますが、家の中の環境を見直してダニ対策、飼っている猫対策をしなければ鼻炎症状はよくなりません。
アレルギーの感作は、乳幼児期には食物アレルゲンが多く、2歳以上になると環境アレルゲン、4~5歳以上になると花粉アレルゲンが増えてきます。ですから乳幼児にスクリーニング検査をしても、花粉やカビなどは不要ですし、大人のスクリーニング検査に入っている食物アレルゲンは多くは不要で、もし感作があると、今まで食べていたのに食物アレルギーになった??などと考えたりします。
小児のアレルギー専門医は、乳幼児の食べ物で、何をどう、どのくらい食べてどうなったかを詳しく聞いてそれに応じたアレルゲンを選んで、CAP RASTというアレルギー検査をします。13項目まで保険でできますが、感作されているだけなのか本当に食べて症状が出るのかは、コンポーネントと言ってその食品のアレルギーを起こす蛋白成分のIgEを調べます。卵白のオボムコイド、乳のカゼイン、小麦のω-5グリアジン、ピーナッツのAra h 2,クルミのJug r 1などです。ピーナッツに陽性でもAra h 2陰性ならピーナッツアレルギーではありません。検査はして終わりではなく、その意味を説明し医学的対応を指導しなければ、意味がないのです。
当科で8年間食物アレルギーの負荷試験・経口免疫療法をしてきて卵と乳が食べられるようになり今小麦で頑張っている子のお母さんが、他院ですすめられてしたスクリーニング結果をもって相談にきました。ずっと普通に食べている米と大豆に感作があったのです。もちろん食物アレルギーではありません。説明して安心してもらいましたが、そんな混乱もおこすスクリーニング検査です。