春に想う定期券

磁気定期券を二つ持って通勤している。JRと御堂筋線・北大阪急行の二つである。改札機で定期券を入れ、二歩ほど歩くと先のほうの取り出し口に出てくるのを取るのである。

2年程前か、JR新大阪駅の出口改札で、投入口に花のシールが貼ってあり、取り出し口にもピンクの花のシール。よく見ると桜で、ちょうど3月くらいの春の初めであった。わあ、すてき!と私はうれしくなり、改札を通るたびに春を感じた。粋な女性駅員さんの発案かな、とお礼を言いたい気分だった。それから季節が変わると、シールも張り替えられた。夏はひまわりや浮き輪、花火の柄、秋になると紅葉、冬には雪だるまや手袋や雪の結晶の模様など。シーズンごとのちょっとした彩りが、毎朝一瞬の改札を通るときの心のなごみになった。

ところがこの春、急に切符や磁気定期券をいれる改札機が減った。今までは、どちらもできる改札機が多かったのにタッチだけで通れるICレーンが増えたのである。磁気定期券を使えるのは、新大阪駅では7レーン中2つのみに、京都駅西口に至っては、11レーン中3レーンのみになり、そこを探してそこまで回らなくてはいけない。多分IC化を進めようという流れなのだろう。取り出し口の桜のシールも突然無くなり、周りをみても皆ワンタッチ、取り出し口で定期券を取り出すのは少数派であるとわかった。

4月に定期券を更新するにあたって、IC定期券も検討した。しかし問題が。私は両面があいた形の定期券入れを長年愛用していてとても使いやすい。二つの定期券が両面に見えて、必要なほうを出して、入れて、改札を通る。定期券入れの中にICカードも入っていて、通勤路線でない電車の乗り降りやコンビニでの買い物など、そのままワンタッチで便利である。しかし定期券をICタイプにすると、ICカード3枚重ねて一つに入れてタッチはできないとのこと。それでは3面鏡みたいな定期券入れを用意し、3面を別に使い分けるわけ?探したがそういう3面鏡定期入れはなかった。交通ICカードと定期券をひとつにすることもできますよと言われたが、交通費として定期代は経費から支出、個人の買い物もするICカードと一緒にしては会計管理がややこしい。

かくして、こうなったら最後まで磁気定期券を出し入れして、IC化に逆らってがんばろうと思う。もう取り出し口になごむシールはないけれど。

発熱外来

新型コロナは、変異株への変化もあって、関西で危険な状況です。毎日1000人以上の発症があれば、それはもう入院するベッドもないし、重症化しても受け入れる病院もなく、もう医療崩壊が始まっています。

子どもたちの間でも、4月から新学期で、保育園・幼稚園でいろんな病気が流行し、熱が出る子も増えています。感染性の胃腸炎やRS ウイルスなども多いです。ちゃんと見極めて正しい診断をし、できる検査はして、注意点をお話しし、何日か経過観察、どうなれば再来してもらうかなどを短時間で判断せねばなりません。いつもの病気ならいいのですが、こんなにコロナ感染が多くなり、身近な学校や園で発症者が出ていると、どこで紛れ込んでくるかわかりません。専門家の話を聞きましたが、診察だけでは、ほかの病気とコロナと区別はつかないのです。そこで、万一のことを考え、発熱二日以上続く患者さんは、発熱外来の時間帯を決め、特別室で防護体制をしっかりとったうえで対応することになりました。どうぞご協力ください。医師も看護師も、動きづらいし神経を使うので1時間が限度です。しかし幸いいまのところコロナ感染の患者さんはまだ出ていません。

連休はどこにも移動できず、鬱屈した日々が続きますが、なんとかみんなで乗り越えましょう。

春に想うワクチン

子どもたちは春休みに入りました。周辺は桜が満開です。

ここにきていろんな病気が流行り始めました。寒い間はインフルエンザも含め、風邪も少なかったのですが、季節の変わり目となり暖かくなったり寒くなったり温度差が出てきたころ、2月末から、高熱が出る咽頭炎や、吐き気の来る軽い胃腸炎、鼻水だらだらの風邪などが増え、みんなウイルスです。先々週から0~1歳児のRSウイルス感染が続き、普通と違って咳や呼吸困難はそれほどひどくないのですが高熱が5日くらい続きます。保育園で流行しているようです。幸い重症になる子は少ないのですが、2週間で3人が入院となりました。

私が医者になったころ子どもたちに重症の病気をもたらした感染症は今、ほとんどがワクチンによって予防できるようになりました。研修医の頃当直をしていて、夜に乳児が発熱と痙攣で来たら、必ず髄膜炎を疑って、髄液検査をして細菌培養をして診断がつけば夜中のうちに抗生剤の治療を開始していました。診断と治療が遅れると死亡や後遺症の率が高まるのです。髄膜炎の起炎菌の大部分を占めていた肺炎球菌、インフルエンザ菌は今ワクチン接種で激減し、ワクチン前は年間700人以上だった発症が、最近では10人前後の発症になっています。研修医1年目の頃、麻疹(はしか)にかかって脳炎をおこし、昏睡状態で病院に転送されてきた女の子は一度も目覚めることなく1週間で亡くなりました。出産まじかに水痘にかかったお母さんが出産した赤ちゃんは新生児水痘で重症化し脳炎になりました。先天性風疹症候群の赤ちゃんも産科から回ってきました。生まれつき心疾患と目に異常があり、いまではできる聴力検査も当時はなくて確認できませんでしたが聴力障害もあったかもしれません。当時はみな、運命と思ってあきらめるしかなかったのです。今は麻疹、風疹、水痘、みなワクチンで予防が可能です。小児科医としては本当に子どもたちが元気に育ってくれてうれしい時代になりました。

副反応が怖くてワクチンはいやだという意見もあります。実は副反応のないワクチンはありません。しかし副反応の確率は非常に少なく、ワクチンをすることにより社会全体で得られる利益が勝るので行う必要があるのです。ワクチンも次々に改良され、副反応の少ないものが開発され、変わっていきます。日本は先進国の中ではワクチン後進国で、安全なものを後出ししていますので、今やられているワクチンはほぼ安全でお薦めのものばかりです。どうぞスケジュール通りに定期接種を受けてくださいね!

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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