喘息は点でなく線で診る!

喘息は、空気の通り道である気道(気管支)に、炎症がある呼吸器の病気です。慢性の病気で、気道の炎症がありすごく過敏なので、刺激(かぜ、運動、冷たい空気、アレルゲンとの接触など)が加わると気管支が収縮して空気が通りにくくなり、ぜーぜー、ひゅうひゅういいます。ひどくなると呼吸困難になります。気管支に分泌物が増えるので、それを出そうとして痰の絡んだ咳が出ます。これが喘息発作です。発作は、気管支拡張剤を吸ったり飲んだりテープで貼ったりするとそのうちよくなりますが、慢性の病気なので、また刺激が加わると発作になります。3回発作があれば喘息と診断して発作予防の長期管理が必要になります。
専門でないお医者さんに診てもらうと、1回1回の発作の治療はしてくれるのですが、喘息は、点で診ずに線で診ることが大切です。発作と発作は個々に起こっているのでなく水面下にある原因は同じものなのですから。「うちの子は風邪をひかなければ喘息出ないんです」というお母さんが時々いますが、いや、それが喘息ですってば。喘息のない子は風邪をひいてもぜいぜいいわないんです。

喘息の治療で注意することを三つ。専門医でないと知らないかもしれません。
1) 喘息の発作時に、「咳止め」は禁です。アスベリン、メジコンという薬は、小児科でもよく出す咳止めですが、喘息の咳は痰を出そうとしているので、咳を止めると痰がつまるし、呼吸抑制作用もあります。小児の喘息のガイドラインには「発作時には鎮咳剤は禁忌」と書いてありますが、専門医でないと知らないようです。
2) 喘息の発作時にホクナリンテープは、貼ってゆっくり効く気管支拡張剤です。しかし実は喘息でもないのに「咳止め」として出されることが多いです。喘息でなければ貼っても効かないだけで害はないのですが、本当に喘息の患者さんは、後発品の「ツロブテロールテープ」ではなく、「ホクナリンテープ」を使って下さい。後発品の薬は同じものですが、貼ってゆっくり薬が放散されるシステムは後発品にはありませんので、血中濃度がすぐ上がってすぐ下がってしまいます。持続効果がなく、ほかの気管支拡張剤とかぶると副作用が出ることがあります。
3) 吸入していますが咳がとまりません、という初診の患者さんが来ます。よく確認すると吸入の仕方が正しくないことがほとんどです。液体の薬をネブライザーで霧にして吸う吸入は、乳幼児ではマスクを顔にあてて、下をむかない姿勢でやります。初めてではなかなか難しいです。マスクを嫌がるので顔から離すと、薬は体に入らず、ただよっており、効果はありません。プシュッと出す定量噴霧式の吸入薬も、大人はくわえて吸いますが、子どもは無理です。スペーサーという道具が必要です。いずれも医療者による吸入指導が必要です。吸入は、正しくやらないと効きません。
喘息治療にはいろいろコツがあります。治療がうまくいかないときには相談してください。

スマホに子守をさせないで!

先日路上で見かけた若いお母さん二人、それぞれにベビーカーを横にして、お出かけ中らしく立ち止まっているところ。いつも子どもたちが気になる私。ベビーカーを見ると、ふたりとも1歳から1歳半くらいの男の子で二人ともそれぞれスマホを握ってじっと見入っている。専門的見地からは、こんな小さな子にスマホを見せるのはやめてほしいです。目の発達にもよくないですが、何より人間としての発達によくない。

1歳といえば、歩けるようになり、言葉で気持ちを伝え始め、身の回りのいろんなものに興味を持って、なになに、これ?みたいに自分で動いて全身の感覚で新しいものを知っていく時期。それには五感が重要です。ベビーカーに乗っていても周りを通り過ぎていく人や路上の花や同じ目線で散歩している犬など、見て、においをかぐ。電車の音、鳥の声、ひとの話し声、聞いて耳をかしげる、なんだろう?土を触ったり、動く虫を触ってびっくりしたり、水たまりにはまって水の冷たさに驚いたり。食べ物も離乳食を終えていろんな味のものが入ってきます。いやだー、こわいー、きもちいいー、あれなにー、おいしー。感動でいっぱいです。おとなからみればバカみたいで時間の無駄に見えますが、あなたもそうやって初めての経験をして大きくなったんだよ。ベビーカーで大声を出したり、抜け出したくて暴れたり、目的の場所に移動したいだけのお母さんには迷惑でしょうが、こどもの目線に降りて、どうしたの、なにがあったの、なにが見えたの、と話しかけることで親子のコミュニケーションがとれて、お母さんは子どもの気持ちを推し量る練習になるのです。え、こんなものがおもしろいのーとつい笑っちゃって、子どもの新鮮な感性に気づきます。

スマホの動画は動くので子どもはじっと見入りますが、一方通行です。触れないしにおいもないし、問いかけても疑問に思っても相手に通じません。おとなしくしているので親には便利ですが、日常的にスマホに子守をさせているなんてもったいない。今の若い方は日常にスマホは当たりまえですし便利なツールですから、調べ物をしたり道先案内をしてもらったりそりゃ必要でしょうけど、自分がたいくつなときになにげにスマホを開けるみたいな感覚で小さい子どもに渡さないでください。電車の中でもベビーカーの子どもがもぞもぞしているのにお母さんは全く子どもを見ずにスマホに夢中、ということも珍しくなくなりました。公共機関で子どもが泣いたり暴れたりすると冷たい目で見られるからスマホで黙らせるんだという反論もあるかもしれませんが、泣いたり暴れたりしてる子どもがなにを訴えているかに気が付いていくのが子育ての重要なところです。もちろんひとりで抱え込んで虐待に追い込まれる構図もあるので、身近なひとや相談者や育児サークルや、むしろいろんな場に出かけて行って、子どもの感性に気がついてください。こんなおもしろい機会はめったにないのにー!

お散歩にいい季節になりました。てこてこ歩いてお出かけして、子どもが道端のアリンコに気づいてじっと見る、お花をつんでママに上げる、ドングリを拾ってポケットに大切にしまう。そんな大切な贅沢な時間を大切にしてください。忙しいお母さんであるほど、ふと立ち止まって子どもとじっといろんなものを共有すると、いろんな新鮮な気づきがあるでしょう。放っといても10数年もすれば、話したくても子どもはスマホばかり見てお母さんなんて相手にしませんよ。今この大切な時期、もったいないことです。

いくつになっても恐竜ガール

先日の休みに、東京上野の国立科学博物館でおこなわれている「恐竜博2019」に行ってきました!恐竜はもとから大好きです。だってあんな大きないろんな、今はない形の生物が、かつてこの地球上に、しかも1億7000万年ものあいだ繁栄していたって、すごいじゃないですか?それがいろんなところで発掘され、研究され、新たなことが証明されていく、というのは科学としても興味深いけど、探検のようなわくわく感があります。北海道大学の小林快次先生の、「恐竜まみれ」(新潮社)という本が面白くて、恐竜学者の発掘現場の実態がよくわかります。お勧めですよ!

今回の展示の目玉のひとつは、日本で初めて北海道のむかわ町で発掘された、新種の恐竜の全身骨格です。アマチュアの化石好きのおじさんが見つけた尻尾の骨が、海の地層から発見されたから、ワニかなにかと思われて7年も地元の博物館の倉庫に眠っていたのです。それを、東京から来た古生物学者の先生がこれは恐竜の骨だと確定、北大の小林先生が指揮を摂って、全身の骨格を掘り出しました。予算もいるし、人手もいるし、発掘事業は大変ですが、8年かかって全身の骨の88%を掘り出しクリーニングし、今回全身の骨の展示となったのです。地上にいた恐竜が死んで海に運ばれそのまま海の地層に化石として残ったという、当時の状況を予想しながらあるはずの骨を探り当てる過程が本に書かれていて、すごくおもしろかったです。ちなみにこれはむかわ竜と呼ばれていましたが、このたび「カムイサウルス」と学名が決まりました。

もうひとつの目玉は、モンゴルで50年かけて全身がそろった大型の新種恐竜、「デイノケイルス」です。恐竜発掘の国際チームで、これに小林先生も参加しているのですが、初めは腕が2.4mもある骨が出てきて、どんな恐竜かとわくわくしていたんですって。その全身骨格の本物が展示されていましたがその見上げる迫力!全身11mもあります。でもCGで再現されると、ちょっと笑っちゃうようなおちゃめな風貌。どう猛な肉食恐竜ではなく、草を食べていた証拠の胃石も見つかっており、手は大きいけど口はカモノハシのようなくちばしで、背中にはスピノサウルスのような帆を背負い、毛におおわれて今まで見たことのない新種の恐竜です。そのほかにもいろんな恐竜の展示があり、CG画像で恐竜世界を楽しめたり、めっちゃ楽しい空間で、おばさんひとりで興奮していました。周りは子供連れもシニア夫婦もいたけど、誰が見ても面白いと思う。いくつになっても恐竜ガールします!

恐竜の骨はいろんなことを教えてくれます。恐竜は6600万年前に絶滅したといわれているけれど、実は進化して鳥として現代にも生きているし、恐竜の生きた時代にくらべれば人類なんてほんのちょっとの新参者。しかもこの100年で、戦争だのテロだの、温暖化や森林伐採による環境破壊など、人類は発展しているように見えて自分たちで滅亡に向かっている。それも大きな自然の経過なんでしょうが、何万年も生き延びないと思うなあ。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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