花粉関連の食物アレルギー

花粉症の患者さんが増えるにつれ、花粉からくる食物アレルギーが増えています。ある花粉に感作されている(IgE抗体を作ってもっている)と、その中の特定のタンパク質によく似たタンパク質を持っている果物や野菜にアレルギーを持つようになる(交差反応という)のです。多いのは、シラカバやハンノキの花粉症で、リンゴやモモを食べると口のなかがかゆくなる、違和感がある、というもので、口腔アレルギー症候群(OAS)と言われます。それ以外にもいろいろ報告され、花粉関連の食物アレルギー(PFAS)といわれるようになりました。

 今年の6月小学生男子が、ときどき学校給食を食べた後蕁麻疹やかゆみの症状が出るのですが原因がわからないので、専門医である当科に相談に来られました。献立はいろいろですが、カレーが多いのに気づきました。でも家ではカレーを食べているとお母さんは言います。よく聞くと、花粉症があり、検査をするとスギのみならず、ヨモギの感作も重症でした。ヨモギの花粉と交差反応でセリ科のスパイスアレルギーの報告があったことを思い出して調べてみました。市の教育委員会の栄養士に問い合わせると、給食のカレーはE社のカレー粉を使っており、いろんなスパイスが混ざっていました。スパイスの検査は血液検査にないので、プリックテストといって、直接食品を皮膚につけてひっかくことで反応を見て証明するしかありません。E社に連絡して、スパイスを提供してもらうことができました。小学生に夏休みに来てもらって彼のプリックテストをすると、たくさんのスパイスのなかで、セリ科のスパイスであるクミン、コリアンダーに陽性でした。食べてかゆいといっていたアスパラガスも陽性で、これもヨモギ花粉と交差するのだそうです。そのほか、セロリ、ニンジンなども症状がでる可能性もあります。ちなみに家のカレーはG社のお子さまカレーで、あまりスパイスが入っていないのでした。この例も花粉関連の食物アレルギー(PFAS)です。

 食べるのは毎日のことなので、アレルギーの原因食品を確定するのは大切なことです。この小学生も原因がわかると、給食を全部やめる必要はなくなりました。こういう患者さんが増えてきて、ずいぶん頭をひねったり調べたりしますが、無事診断がつくと私もほっとしてうれしくなります。

和歌山にて

週末、和歌山で行われた日本小児臨床アレルギー学会に行ってきました。行くときは台風が来ていて大雨でしたが、途中で和歌山はそれたようです。小児科のなかでもアレルギーを専門にやっている医者、看護師、栄養士、薬剤師、教師など多職種の集まる学会です。

私と同じく、アレルギー専門の小児科を新潟で開業している田中先生の発表は、乳児で湿疹があると3か月から卵の感作が出てきて月齢がいくほど進んでいく、というものでした。だから早くからステロイド外用で湿疹をよくしないと卵アレルギーになっていくということを強く主張できるのです。まさに、私が実感し、検査をして感じていることでした。これをちゃんとまとめて報告する彼は偉いです。病院勤務の専門医は、2-4か月の乳児の湿疹を診る機会は少ないのです。よほどの重症でなければ、患者さんは近くの小児科診療所に行くからです。でも専門医でなければ検査はしません。アレルギー検査は高額なので小児科の包括医療をしていれば赤字になるし、なにより、その時期のアレルギーの検査値をどう評価したらいいか経験がないからです。私もみんなに検査をするわけでなく、早くから湿疹の治療をして、離乳食開始まで症状がよくならなければ、ご家族と相談して検査をしています。検査値によって、根拠を持って薬の使い方や離乳食の計画を立てることができるのです。

羽曳野医療センターからは、長引く食物アレルギー児の予後の発表がありました。6歳以降でまだ卵・乳・小麦の除去をしていた子でも、8年後(高校生~大学生になるころ)に調べると、卵で68%、乳で66%、小麦で80%の子が、摂取できるようになっていたとのことです。当科にもなかなか食べるものが増えていかない重症の食物アレルギー児がたくさん来ていますが、気長に成長を待ちながら食べ続けましょうね、と患者さんやご家族をはげませるようなデータでした。
台風が去って週があけると猛暑です。暑さに負けずにみなさん頑張りましょう。

夏休みでたくさんの患者さんの予約が入っていますが、午前中の小児科外来も満杯で、待ち時間が長くなり、予約時間もずれ込んでいます。休み時間ゼロで診療しなるべく待ち時間を減らすように努力していますが、患者さんへの説明は省略できません。当科専門性をご理解いただきご了承ください。

ワクチンの恩恵

普通6月は病気の少ない時期なのですが、今年はバタバタと忙しくしています。手足口病は毎年夏に流行するウイルス疾患ですが、今年は大流行。それも、結構発疹がひどいタイプが多いです。跡形もなくよくなりますけどね。リンゴ病も全国的に流行中。これらはワクチンで予防できないのでまあ仕方がないのですが、ワクチンで予防できているはずの麻疹や風疹がパラパラと流行しているのは問題です。大阪で先天性風疹症候群の子どもが確認され、大昔からわかっていて予防できるはずの病気がいまだに日本で出ることにびっくりです。妊娠する女性だけを対象にワクチンをした時期があって、いやあ人口の半分は男性だし、妊娠する女性には必ず男性のパートナーがいるのだから、女にだけワクチンってどうよ、と当時から思っていましたが、やっぱり。今になって慌てて、その世代の男性の風疹ワクチン接種をよびかけていますが、遅いよね。

昔医者になったころは、麻疹で亡くなった子を何人も診たし、ある患者さんの若いお父さんは風疹の脳炎で亡くなりました。赤ちゃんの百日咳で命があぶなかった子もいたし、出産直前にお母さんが水痘にかかり、出産した赤ちゃんが感染していて、必死の治療をしたけれど三日で亡くなってしまったこともありました。赤ちゃんが高熱と嘔吐で救急で来れば髄膜炎を疑い、もしそうであれば1/3は死亡、1/3は後遺症、1/3は助かる、と言われていたものです。それを起こす肺炎球菌とインフルエンザ菌のワクチンが始まって、ほんとに髄膜炎はなくなりました。若い小児科医はこういう病気を見たことがないでしょう。

ワクチンは防げる病気を社会全体で防いで子どもたちを守るのです。最近はほんとうに30年前と違っていい時代になっているのです。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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