診察で何を話すか?

連休明けから、夏のような暑さとなり、早くも夏の病気が増えてきました。
のどが赤く痛くなり、高熱が3-5日続くアデノウイルスや、手足にぶつぶつ、のどにぶつぶつができる手足口病などです。ウイルス性の胃腸炎は4月に比べ減ってきました。リンゴ病は全国的に流行していて、まだぱらぱらと見かけます。
本来は喘息の発作の少ない季節のはずですが、気候の変化のせいか、流行りのウイルスの種類によるのか、喘息の子の風邪に伴う発作もけっこうあります。
朝からたくさんの受診の申し込みがあるのだけれど、喘息やアレルギーの患者さんが多いせいでしょうか、ひとりひとりの患者さんの診察や処置や説明に時間がかかり、昨日の水曜日は診察開始1時間で終了した患者さんは6人でした。ひとりめは喘息の子の発熱、発作なし。ふたりめは喘息と肺炎の合併で入院していた子の退院後。何度も繰り返すのでお母さんと相談して、大きな病院で精密検査のため紹介することになりました。こういうお話をしているとひとりに10分くらいかかる。次の兄弟はひとりに喘息が出ていて、吸入に回り、そのあともう一度診察。次の姉妹も、ひとりは喘息入院の退院後で薬の長期管理に入りましたが、妹のほうに喘息発作があって薬を開始することになりその説明も。次の子も熱とともに咳があり吸入に回りました。
だから、朝いちに診てもらって薬もらって少し遅れて保育所に預けて仕事にいこう、とかすこし1時間目遅刻して学校に行こう、という小学生にとっては待ち時間長すぎ!ということになるのかな。普通の小児科さんだとさらさら診察がすすむのかしら。患者さんも上手に医者を使い分けていただいていいと思うのですが、なかにはこちらで喘息治療をしていて夕方熱が出て近くの小児科に行くと、うちでは診ない、かめさきに行け!なんていわれて困った患者さんの話も聞きます。こちらだって、最初に診てもらって薬が効かない、と次にこちらに受診される患者さんのときに、この先生もはじめはこういう診断で薬出したけど効かなかったら次はこうする、という考えがあったのかもなあと思います。そんなに言わずにみんなで子どもたちを診たらいいと思うけどなあ。私は自分でわからないものや専門でないものは、患者さんにごめん、わからん!と言います。
まあでも、こどもの感染症は自力で自然に治るものがほとんどで薬なんてあんまり効かないことも多いので、小児科医の役割は、重症の、本当に治療が必要な患者さんを見落とさないことだと思ってます。喘息やアレルギーに関しては専門なので治療の必要性をよくお話しし、自然に治る感染症に関しては予想される経過を話して薬のいらないわけを話す。あれ、どっちにしてもお話が長くなって時間がかかるはずだ。患者様方、お待たせしてすみません。

4月の外来は・・・

4月の外来は患者さんが多くて、受診できない、予約できない、待ち時間が長いなどの患者さんのご不満があるかと思いますがごめんなさい。医者も生きている人間なので、どうしても限界があります。
4月は、アレルギーの患者さんも多いのですが、保育園に行き始めた小さい子たちの小児科的病気も多いです。1歳前後の子どもたちが保育園デビューすると、たいてい2週間以内で風邪をひきます。鼻水や咳くらいならいいのですが、38度くらいの熱が出ると保育園から呼び出しがかかるし、預かってもらえない。今はウイルス性の胃腸炎もぱらぱら流行っていて、吐いたり下痢したりもします。いつもお母さんたちに言うのですが、熱があっても、咳をしていても、まあまあ機嫌がよくてまあまあ食べられて眠れていれば大丈夫。熱がなくても症状がなくても、機嫌・食欲・睡眠がよくなければ大きな病気のことがあります。
先日は1歳のお子さんがずっとおえっと咳込みがつづいて、何かのどにあるものを出そうとしているのです。何かがのどにひっかかっているようです。診察した海老島先生がファイバー検査で取り出してくれる病院に紹介しようと考えていたら、その子の舌のうえに何かが見えて、手でぱっととりだしたら、缶飲料に貼ってあったプラスチックのシールだったんですって。0歳-2歳くらいの子はなんでも口にいれますので要注意。突然咳込みが続いたり呼吸がおかしくなったら誤嚥を疑います。ボタン式電池は要注意、食道や胃に穴があくこともあります。
あわただしい新学期、新年度、みんな元気で。5月の長期連休になりますが、うちも4月28日から9連休です。皆さん元気で楽しくお過ごしください。

食べられるようになるには・・・

こどもの食物アレルギーの多くは乳幼児期でよくなっていきます。赤ちゃんの時に卵を食べて赤くなった、ミルクを飲んで吐いた、などあっても、大きくなると自然に食べられるようになっていくことが多いのですが、それには、あまり気にせずにいろいろ食べていることが前提です。怖がって、一切食べないとか、検査をしてIgE値があれば皆除去しちゃうと、本当に食べられなくなってしまうのです。食物アレルゲンは、食べることによって免疫をつける(経口免疫)ことができることがこの10年くらいで実証され、2017年に日本小児アレルギー学会が、「アトピー性皮膚炎のある乳児は、6か月までに皮膚をきれいにして、卵を微量から摂取することで卵アレルギーを予防できる」という提言を出しています。
食べた時の症状が強い患者さんや、IgEがすごく高い患者さんには、食物負荷試験をします。微量の食品を医療機関で食べてみて、本当に症状が出ない量を確認するのです。ここでパスしたら、お家で少しずつ増やして慣らしていくのです。専門医がちゃんと量や間隔を指定して指示するのを経口免疫療法というのですが、重症の食物アレルギーの患者さんが食べられるようになるには、いまのところこれしかありません。
ただ、週に3回、量を測りながら、アレルゲン食品をきちんと食べていくことはそんなに簡単ではありません。食べて2時間は、外出や入浴を控えて家で観察しなければならないし、体調が悪いと同じ量でも症状が出たり、手持ちの薬で治まらずに救急に行くこともあります。それだけ、精神的にも時間的にも負担のある、リスクも伴う方法です。でもこれしかないのです。とくに、働いているお母さん、保育園に行っている子どもたちは生活に時間的余裕がなくて、忘れたりやめちゃったりすることも少なくありません。私の仕事のひとつは、2-3か月に1回、お母さんにその進捗状況を聞いて、食品の増やし方や種類で、やりやすく安全な方法を提案し励ますことです。
それから、年長のお子さんになると、「食べない」ことがあります。卵や乳は食べなれていないとおいしいと思えず、食べて何らかの違和感を感じるのか、「食べてくれない」、「嫌がる」と訴えるお母さんもいます。食べて増やして慣らしていくやり方なので、食べなければ始まりません。怖い思い、不安な思い、いやな思いをしながら週3回食べるのが大変であれば、経口免疫療法をせずに、「食べない生活」を選ぶのも一つの道かと、最近は考えるようになりました。このいろんな食べ物があふれている時代に、卵や乳が一切食べられないというのは不便だし、誤食で重い症状が出るリスクもあるのですが、それなりに子どもも大きくなるにつれて、食べられないものを認識して、自分の身を守る知識と技術をもつしかありません。友人と外食に行っても、自分の食べられるものを選んで注文できるようになり、何か異常があれば薬を飲んでエピペンを自己注射する、救急車を呼ぶ、などです。
家族の努力で経口免疫療法を続けたたくさんのこどもたちが、何年もかかって食べられるようになって卒業していきました。それは専門医としてうれしいことですが、食べない、食べられない、という、経口免疫療法にのれない子どもたちと家族をどう支えていったらいいのか、まだまだ考えなければならないことがあります。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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