食べれば寛容、皮膚からはアレルギー(1)

アレルギーの病気は、もともとアレルギーを起こしやすい体質があって、それにアレルギーを起こす物質(アレルゲン)が体内に入ってきて病気が起こるとされています。アレルギーの体質とは、アレルゲンに対しIgEという抗体を作りやすいことで、これは遺伝的に決まっています。でも遺伝因子があっても、アレルゲンを身の回りからなくす、アレルゲンが体内に入らないようにすれば、IgEは作りにくいし、アレルギー反応も起きないのです。
ですから、花粉症の人はアレルゲンである花粉を体内に入れないようにマスクやメガネをする、ダニアレルギーのある喘息の人は、掃除をして身の回りのダニを減らして発作が起こらないようにする、というのが基本です。では食物アレルギーは?当然アレルゲンである食品を食べないようにしてIgEを作らないようにする、またアレルギー症状が起こらないようにする、というのが基本です。しかし最近、食物アレルゲンは食べる事だけが問題ではないという科学的証拠が増えて来ました。
アメリカではピーナツアレルギーが多く、ピーナツを食べて起こるアナフィラキシーも多いのです。そこで、ピーナツアレルギーを予防するために、アレルギー家系で母が妊娠したら、母乳をあげる母も生まれてきた赤ちゃんも一切ピーナツを摂取しないようにしたのです。しかし、結果は、母も子もピーナツを食べていない場合でも子どものピーナツアレルギーは発症し、よく調べると、家族のピーナツ摂取が多いほど多かったのです。また、ピーナツオイルを使ってベビーマッサージをした赤ちゃんの中から多くピーナツアレルギーが発症したこともわかりました。それから、遺伝子背景が同じユダヤ民族でも、アメリカではピーナツアレルギーが多く、離乳食で初めからピーナツを与えるイスラエルではピーナツアレルギー患者が少ないことも報告されました。
どうやらピーナツは、皮膚から入ってIgE抗体を作りピーナツアレルギーとなるが、口から食べていると逆にアレルギーになりにくいという事らしいのです。もともと食物が消化管から入ると、消化機能や免疫機能が働いて免疫寛容といってアレルギーを起こさず受け入れる、ということが分かっていました。
そこで、食物アレルゲンは、口から入ると経口免疫寛容となるが、皮膚から入るとIgEを作ってアレルギーになるのではないか、という仮説が10年ほど前にイギリスのギデオン・ラックという先生から出されたのです。これは、最近のアレルギー関連のトピックスのひとつでした。(以下来月に続く)

患者さんの訴えは正しい

日本アレルギー学会は、年に一度(去年までは年に2回でしたが)いろんなアレルギーの研究や最新知見や症例が報告されるアレルギーの専門学会の集会をしています。今年は5月26日から28日、火、水、木の日程で行われました。平日に三日も休むのは、開業医では患者さんのご迷惑になるので、今年は水、木の二日間休診にして学会に行ってきました。アレルギーと一口に言っても、いろんな分野、いろんな病気、いろんな研究があるので、日々勉強しないと専門医といえども、追いつけないのです。
今回猛烈に反省し、感じたのは、患者さんの訴えは正しく、ちゃんと耳を傾け、調べないといけないということです。
つい最近ですが、風邪で葛根湯という漢方の薬を飲んでいると、アレルギー症状が起きにくいんですよ、とおっしゃった患者さんがいらっしゃいました。私は漢方薬の勉強をしていないし科学的証拠を知らないので、いやあそんなことはないでしょう、と言ったのですが、今回学会に行くと、ポスター発表で、葛根湯のプエラリンという成分が、大腸粘膜で制御性T細胞というリンパ球を増やして食物アレルギーを抑える、という富山大学の実験データがあって、あれ、実証されてる!と思いました。
また、鶏卵のアレルギーが昔あったけど今食べてる、という小学生のお母さんが、給食のウズラ卵1個で口がかゆいというんです、というので、いや、鶏卵が食べられるのにそれは気のせいでしょう、と言いました。鳥類の卵はアレルギーの起こしかたはみな同じ、と習っていたからです。しかし今回やはりポスター発表で、鶏卵にはなくウズラ卵にある成分が、嘔吐・下痢を起こした患者さんから証明されたというのを見つけました。
それから、年長児に、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーという病気があります。食事をしたあとに運動すると、じんましんや呼吸困難が起きるのです。小麦や甲殻類の摂取でおこることが多く、検査で証明されればいいのですが、最近、今までまったく食物アレルギーなどなかった中学生で突然原因不明のこの病気が起こる症例が増えています。検査で出ればいいのですが、調べても何も出ません。これも、ポスター発表で、何回か起こすと食事の中のある食品があやしいということになり、入院して怪しい食品を食べて運動する、という大変な検査をしています。そうすると、カレー粉の中のセリ科のスパイスとか、今まで食べていた肉類だとか、思わぬものが原因であったことが証明されていました。
最近いろんな変わったアレルギーの病気が増えているのです。珍しいので、すごく興味をもった医師がいろいろ試行錯誤して何かを証明して報告するのが学会です。私も、昔済生会中津病院にいたころのように、専門病院で入院設備もあり、時間的拘束がなければ、いろいろ調べたり問い合わせたり特殊な検査をしたりして、そういう稀な難しい病態に迫ることができましたが、開業して、週に六日間ずっと外来の仕事をしていると、調べたりいろんな知識を取り入れる余裕もありません。学会は、そういう自分にカツを入れる場であり、いろんな新しい研究内容を聞いて、とてもエキサイティングでした。
休診はご迷惑をおかけしますが、日々の診療でこれを患者さんに還元していきたいと思います。

ひどいかぜでした・・・・

4月は年度初めで、毎年忙しい月ですが、今年は気候のせいでしょうか、暑くなったり寒くなったり、雨が多かったりで、喘息の発作も多いし、なんかへんなかぜが流行っています。
かくいう私も4月6日から約3週間風邪に悩まされました。患者さんからいただいたんだと思いますが、巷で流行っている「のどかぜ」です。ウイルス性の咽頭炎でしょう。のどがいがいがして、から咳が出て、ときに咳き込んでおえっとなるほどです。私はこのひき初めに、患者さんに検査結果や病気の説明やアレルゲン食品の食べ方等々、1日中しゃべる仕事が続いたのですっかりこじらせてしまい、声が出なくなり、皆さまにはすっかりご迷惑、ご心配をおかけしてしまいました。後半の1週間は、のどについた病原体を出すために痰が絡んで咳き込んで、というのがだんだん日を追うごとに減っていって、完治です。たまに病気をすると、本当に咳というのは、からだを守るための生理的反射で、異物を出したり、感染のあとの気道のお掃除をしてるなあと身をもって思いました。4月はそのほかにもいろいろもりだくさんの問題があって、仕事的にも個人的にも結構つらい月となりました。
先週の土曜日は、クリニックでの診療が終わったのが6時でしたが、そのあと、発達障害の研究会に勉強に行ってきました。アレルギーを専門にやっていると、そのほかの子どもの病気の勉強を深くする機会が少ないのですが、最近発達障害の子どもが増えていて、小児科医にも知識が要求されます。アレルギーの専門医以上に小児の発達の専門医は少なく、大阪大学の小児科の発達神経の先生のお話を伺ったのですが、紹介しても半年待ちの状態だそうです。ちょっと変わってる、じっとしてない、人のいうことを聞かない、マイペース、うまく友達と遊べない、というお子さんはわりと多いのですが、たいていは親や先生たちの理解と許容があればなんとかなります。診断や治療も必要ですが、子どもに合わせた療育というのが求められているなあと思いました。

医療法人 創和会 かめさきこども・アレルギークリニックは豊中市(緑地公園駅近く)にある、小児科・アレルギー科の専門医です。

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