今月の独り言
12月の講演
12月はおもしろい会に呼ばれました。一つは、キャンプ協会・青少年事業団主催の野外活動指導者のためのリスクマネジメントセミナーです。12月7日にその会で、食物アレルギーや喘息など、キャンプ活動中での注意と対策の講演をしてきました。子どもたちにとって、キャンプは自然のなかで自分の肉体を使って新たな体験をし、また仲間たちとすごす楽しい時間です。でも、アレルギーの子どもたちは増えているので、キャンプを主催する施設や機構の運営者や、リーダーと呼ばれる指導者たちはすごく気を使っています。少年自然の家の管理栄養士さんは、なんとなく除去、みたいないいかげんなものからアナフィラキシー既往者の除去まで、対応して除去食の食事を工夫してくれていますし、魚つかみのキャンプに参加した魚アレルギーの子どもへの対応の報告など、皆さんとても熱心で真摯なので驚きました。100人くらいの聴衆もとても熱心に研修されていて、子どもたちの味方がここにもいた、と心強く感じました。
もう一つは、13日に京都であった日本子ども健康科学学会という学会です。医師だけでなく、子どもをとりまくいろんな職種が、子どもの健康についていろんな問題を勉強しようという会なのですが、私は初めて参加しました。実は特別企画「子どもの健康と‘ソーシャル・デザイン‘アプローチ」という中でシンポジストをしたのです。昨年まで、喘息の子どもたちの家庭のダニアレルゲンを測定し、掃除の指導介入をすると1年後子どもたちのダニIgERASTも下がるのではないか、というテーマでダスキンと共同研究をしていて、医療と企業との連携ということでダスキンの共同研究者と一緒にお話しました。医者は私一人で、もともと企画したのが電通の社員で健康情報学を研究しているコミュニケーションデザイナーの男性。あとは、日本初のクラウドファンディング会社をたちあげ、今までネットで9億円を集めたという若い女性と、アサヒグループでCSRといって企業が社会に貢献しますという部門の女性。いわゆる業界が違うってやつで、日頃診療ばかりしているとお会いしないお仕事の方ばかり。とびかう言葉もちんぷんかんぷんでしたが、ソーシャルデザインというのは、同じ目的をもった立場の違う人たちが共同していい社会をつくろうよってことかな?それをこどもの健康を守ることにいかせないかという超画期的な企画でした。新しいことに出会うととまどいますが、でも面白かったです。
師走に入って寒波が続き、一気に冬になりました。気温が下がるにつれて病気も増え、先々週から、インフルエンザもRSウイルスも急増し、高熱が続く患者さんの中に、溶連菌もアデノウイルスもあったりします。うがい、手洗い、十分な睡眠が大切ですよ。皆様お元気で師走をお過ごしください。
学校の講演
だんだん寒くなってきました。かぜひきさんも増えてきましたが、まだインフルエンザもぱらぱらで、流行までにはいたっていません。
先日、伊丹市立有岡小学校にお招きいただき、子どもの食物アレルギーについて講演をさせていただきました。その日は、「こころとからだ」というテーマで、子どもたちが各学年、自分たちの身体と精神について勉強し、考える、という学校ぐるみの取り組みをしていて、放課後に、先生方や希望の保護者の方対象にアレルギーの講演を、ということだったのです。最後は、エピペンのトレーナーを使ってエピペン講習会もしました。先生方も保護者の方も皆熱心に聞いてくださいました。
ふつう、学校に呼ばれて話をする、というのは、重症の食物アレルギーの児童がいて、除去食だのエピペンの使いかただの、急に先生たちにいろんな知識や情報が必要になって、あわててなんとかしなくちゃ、という形のお誘いが多いのです。でも、この有岡小学校ではまだエピペンを持ってきている児童はなく、ひどい食物アレルギーの症状をおこした事例もないとのことでした。でも、食物アレルギーの子どもは増えているし、ちゃんと前もって勉強しておこう、という校長先生のお話でした。
リスクマネジメントといいますが、前もって、起こりうるいろんな事態に対して、備えておこう、というのは大事なことです。地震や津波の際にどう身を守るか、どう逃げるか、不審な侵入者に対してどう子どもたちを守るか、突然心臓の止まった子にどうAEDを使うか。誤食でアナフィラキシーを起こした子にどうエピペンを使うかも、あらたな学校での課題だと思います。興味と問題意識を持ち、学んでくれる先生方が少しずつでも増えてくれれば、アレルギーの子どもたちの大きな味方となるでしょう。
台風ウエディング
10月11日~13日にかけて日本を縦断した台風19号はなかなか強大でした。実は不本意ながら、この3連休、私はこの台風の追っかけをしていました。
もともと、10月12日日曜日に、私の姪が沖縄の石垣島で結婚式を挙げることになっていたのです。彼女は熊本生まれ熊本育ちですが、琉球大学に進学し、産婦人科医になって今石垣島で働いているのです。10月半ばまで、沖縄は海で泳げて、いい季節だからと半年前からウエディングのお誘いがあったのでした。
しかし!最大級の台風がこの連休を直撃。11日土曜日休診にして、朝から博多に向かい、兄夫婦や叔母夫婦などとともに、正午の石垣島直行便に乗ることになっていました。同じ沖縄でも石垣島は本島と400kmも離れており、この日沖縄本島は台風の直撃を受け、那覇空港は朝から全日閉鎖。新郎の両親は沖縄に住んでおり、石垣に行けないとのこと。しかし博多発石垣行きは、上空で直陸不可能なら引き返します、との条件付きで機上の人となりました。私らも行かなかったら、新郎新婦は二人だけで結婚式なんて、かわいそうじゃないですか!台風に向かって石垣島へ向かい、両方の翼がかぜにおされてわさわさ揺れましたが、なんとか着陸。飛行場の吹き流しが、ゆれているのではなく、真横にピンとはためいていました。
かぜぼうぼうの石垣島でした。その夜は本島を台風が通過し、400km離れた石垣でも雨風ごうごう。でも翌日のウエディングは風もおさまり、姪っ子は綺麗で幸せな花嫁でした。さあ、台風は通りすぎたし、那覇空港は再開になったし、台風はまだ九州なので、今のうちに大阪に帰ろう!と夕方飛行場に向かうと、なんと、石垣から関西空港への直行便が欠航。飛行機のやりくりがつかなかったらしい。なくなくホテルにもどりもう一泊。
翌日13日は、台風は九州から関西へ。台風が到達する前に帰らねば!朝いちの飛行機で那覇空港に飛ぶ。飛行場は、キャンセル待ち、欠航便変更のお客であふれていました。那覇から昼過ぎの便で伊丹へ。よかったー、台風を追い越したよ!ところが京都駅で琵琶湖線に乗りつごうとすると様子がおかしい。だいたい駅に人が少ない。掲示パネルが消えている!駅員さんに聞くと、ああ、今止まっている電車が米原行き、本日の最終です。え、まだ3時半だよー?なんでも大型台風に備えてJR関西全域4時ころから全面運休にしたらしい。とにかくなんとか最終電車に飛び乗って帰宅しました。
台風に向かっていき、台風と競り合って帰ってきた連休でした。ウエディングでなかったら石垣島なんてキャンセルでしたが、おかげで貴重な経験でしたし、姪っ子は、一生誰からも忘れられない人生の門出ができました。
帰ってきてからも、台風の影響で、ずいぶん週末からの喘息の発作の患者さんが増えていました。でもみんな、がんばろうよ!