秋の始まりと喘息と

今年の夏はほんとに暑かったですが、やっと最近になって朝夕秋らしい涼しさが感じられるようになりました。でも、朝夕の温度差は、喘息の患者さんにとっては要注意で、当クリニックでは、9月第1週後半から明らかに喘息発作が増えています。毎年のことですが、気道の過敏な方は、鼻水が出やすくなったり、咳が増えたり、喘鳴(ぜいぜい)が出たり、要注意の季節です。
乳児喘息と言って、2歳未満の喘息の子どもたちはただでさえぜいぜいいいやすいのですが、この時期かぜをひくと悪化することが多いのです、2-3歳になるとウソみたいによくなっていくのですが。当クリニックでは、常時乳児喘息の重症の患者さんを5~10人抱えています。先週は、1人入院していただいて治療中、そのほか4人は吸入や飲み薬を追加してお家でがんばっていただいています。単なるかぜですまずに、咳で眠れない、機嫌が悪い、救急外来に走る、吸入や薬は増える・・・ほんとにお母さん始めご家族の大変さ、不安は、経験しないとわかりません。なんとか入院せずにすむように、なんとか最低限の薬で乗り切れるように、これはアレルギー専門医の腕のみせどころです。小さいお子さんは一晩であっという間に悪くなるので、ヤマを超えるまでは眼が離せません。でも、大人の喘息と違って子どもの喘息は、一時期ほんとにひどくても、成長とともによくなっていくのでやりがいがあります。お母さんたちを励ましながら、治療を続けながら子どもたちの成長を待つのです。
私の担当していた喘息のほんとに重症だった患者さんの一番年長は、もう20年のおつきあいになります。今年24歳男子大学院生、来年の就職が決まりました。たぶん小児期に入院した回数は15回くらいでしょうか。ほんとにお母さん始めご家族は大変だったと思いますが、いつも前向きに、治療に取り組んで来られました。ちゃんと受験もし、中学高校と野球にも頑張って、いい青年に成長してくれました。未だにお母さんが毎年年賀状と暑中見舞いのハガキをくれて、ほとんど発作も出なくなりました。発作がなくなるとご縁がうすくなるというジレンマはありますが、縁が切れていくことは主治医としては寂しいことですが、それだけ彼がよくなってくれたことで、小児科医としてはうれしいことでもあるのです。
まだ今から発作のシーズンです。喘息に負けずに楽しい行事の多い季節を楽しみましょう。

子どもっておもしろい!

暑かった夏ももう終わりになりそうですが、ここしばらく、夏休みのせいか、駅で、電車の中で、街角で、たくさんの子どもたちをみかけました。職業柄ついつい子どもたちを観察してしまうし、子どもってほんとにおもしろい。
生まれたばかりの赤ん坊でも個性があるし、成長に従い、いろんな表現法が出てきます。その子どもだけとずっと1対1で過ごしていると、どうしてこんなにいうこときかないのかしらとか、どうして思い通りにいかないのかしらと、悩んだりイライラしたりするお母さんがいらっしゃるのですが、まあ、そもそも子どもなんて思い通りにいかないもんだし、思わぬことをするのを嘆いたり悩んだりせずに、おもしろがるほうが精神衛生的によろしい。それから、話が通じないからといって子どもを甘くみないことです。だいたい1歳半くらいになると、大人の話していることはだいたいわかります。もちろん難しい言葉や概念はまだ知らないし、言葉にして十分表現できないだけで、いろんなことがワカッテル、のです。ちゃんと向き合って人間同士の付き合いをしたほうがいいです。説明したり言葉で説得したり。それが一見無駄に見えても。
先日駅の階段で、2歳前くらいの女の子を抱いた背の高い若いお父さんがいました。ふたりでどこかへ遊びに行った帰りらしい。抱っこしたまま階段を下りかけると女の子が動いて下に降りたがっています。自分で階段を降りたいらしいのです。お父さんは娘をおろして、彼女の立っている階段の2-3段下に待機しました。すると彼女は猛烈に怒って、父親に、後ろに行けと身振りで示すのです。お父さんはいわれるまま階段を上がって、彼女から見えないうしろに移動しました。するとその子はやっと満足して、階段を一段一段降り始めました。お父さんは一段上から一歩ずつ娘のあとについて降りていきます。おもしろいですねえ。この小さい子の主張!彼女は守られるようにひきつれられるように階段を降りたくなかったのです。自分一人で降りたかったのです。かといってお父さんがいなくなってしまえばたぶん不安で大泣きしたでしょう。お父さんを後ろに従えてこそ、彼女は自立の大冒険ができたのです。ほんとにちょっとしたことですが、この小さなお嬢さんは自分でやりたいことができて満足したでしょうし、ええい時間がかかるわいと無理やり抱っこしたまま降りたり手をひいて降りたりせず、後ろにまわってじっと見守った若いお父さんもえらいなあと思いました。
毎日子どもたちに教えられることばかりです。そしていつも楽しませてもらっています。夏も終わり、季節ごとに成長する子どもたちが楽しみです。

満員通勤電車の過ごし方

この4月に引っ越してから、通勤時間の半分約20分を、満員電車で立ったまま、という状況になりました。満員電車での通勤は10年ぶりで、若いころに比べるとずいぶん体にこたえます。三日にいっぺんは足を踏まれるような結構ハードな通勤路。あちこち車両を変えてみましたが、ラッシュアワーはどこでも同じようなもので、すいてる場所などありません。20分の間に停車する新快速の駅はみっつ。たまたま目の前の席が空けばラッキー、と座れます。座ると立つでは、天と地獄ほどの差があります。でも、目をぎらぎらさせて、あそこがあきそう、ささっと席確保!というのも、あさましいようで嫌になってきました。
たった20分、なんとか立ったままのしんどさを感じなくてすむ、いい時間の過ごし方を考えました。Ipodで音楽を聞く、というのはいいかもしれない。でもやってみると聞きたい音楽はその日の気分によって違うし、音楽を探し出すだけで結構手間で(なにかいい方法があるのでしょうけど?)、また音は聞いていても、視界は満員のひとが入ってくるので、そんなにリラックスできませんでした。そこで、ゆれる満員電車で読書、というのはどうかなと思っていましたがやってみると、やはり好きなものが夢中になれていいのですね。
コツは三つ、荷物は最小限にしてリュックに背負い、両手をあける。電車に乗ったら席確保はあきらめて、人が通らずよりかかって本を読んでも邪魔にならない場所を確保する、そして読む本は、とにかくおもしろくて引き込まれるような好きなものにする。
最近成功した本は、レイモンド・チャンドラーというアメリカの作家の本で探偵小説のほぼ古典になっている「ロング・グッドバイ」という、文庫でもぶあつい小説です。昔高校時代に読んだのですが、最近村上春樹の新訳が出て、独特の比喩や細かい人物・背景描写、登場人物の際立つ個性でチャンドラーの文章のおもしろさにはまりました。もちろん事件の意外な展開もですが。とにかく、1週間、通勤時間の苦痛を感じることなく過ごせました。次は何を読もうかな。最近の話題の本では、百田尚樹の「永遠のゼロ」は感動的だったし、直木賞をとった朝井リョウの「何者」もよかった。どちらも、高校生の息子がはまっている作家です。昔読んだ古典的な小説の再読もいいかなと思っています。暑い夏なのでなんとか元気に過ごしたいです。

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